こんにちは、日本画家の深町聡美です。
皆さんは日本画を描く時にドーサを使っていますか?
日本画を描く時にドーサを使わないと、
とある困った事が起きてしまうんです!
今回は、ドーサにまつわるお悩みを解決していきますね
- 絵具がパラパラ取れてしまう
- 絵具がにじんで描きにくい
こんな方はぜひ、最後まで読んでみて下さい!
Contents
日本画でドーサを使う理由は「にじみ止め」のため!


岩絵具がボロボロ取れて描きにくいよ!

ドーサ液はちゃんと引いてる?
日本画で使う和紙や絵絹は吸水性があります。
なので、絵を描き始める前に、にじみ止めを塗る必要があるんです。
このにじみ止めを、日本画では
「ドーサ液」と呼びます。
ドーサ液を引かないと、こんなデメリットがあります…
- 絵具が取れる
- 絵具がにじむ
もし、ドーサ液を塗っていない生の紙に絵具を塗ってしまうと、にじんだり、岩絵具がポロポロとはがれ落ちてしまう危険があるんです。
それを防ぐ方法は次の章!
日本画版にじみ止めである「ドーサ液」の作り方を、解説致しますね!
伝統的なドーサ液の作り方は、こちらでご紹介!
➡【日本画】狩野派のドーサ液の作り方とは?効果はあるの?【丹青指南現代語訳】
狩野派は、ドーサの塗り方にもこだわります。
➡【日本画】狩野派流!ドーサ液の引き方を解説!【丹青指南現代語訳】
日本画のドーサ液を作る時に必要な物リスト

- 膠(三千本一本/粒12~15g)
- 計量カップ
- 水
- ミョウバン
- 適当な小瓶
- 大さじ
- ボウル

ドーサ引きに最適な季節は、湿度が低い冬なんだって!

一年分のドーサ引きを冬に終わらせる人もいます。
今回は、分かりやすくするために三千本膠一本を基準にして解説します。
日本画のドーサ液の作り方を順番に解説!
ドーサ液の作り方①膠水を作る


まずは、普通に膠液を作りましょう!
まず三千本膠一本(粒膠12~15g)を200ccの水で溶かし、膠水を作りましょう。
溶かす方法は
- 電熱器に膠鍋
- チョコレーター
- 電子レンジ
など、どの方法でもOKです!
筆者はチョコレーターで湯煎しています。
膠の溶かし方はこちらの記事で!
➡【日本画】膠(にかわ)とは?作り方と使い方&種類を徹底解説【画材】
ドーサ液の作り方②膠水を三倍に薄める


膠液を3倍に薄めます!

今回は400ccの水を足すんだね!
膠水をボウルに移します。
そして膠水:水=1:2になるように水を足します。
今回は膠水が200ccなので、400ccの水を足します。
比例が覚えにくいときは
「三倍に薄める」
と覚えておくのがオススメです!
ドーサ液の作り方③ミョウバンの飽和水を作る


ミョウバンを、よく溶かそう!
ミョウバンを水に入れて湯煎し、飽和水を作ります。
飽和水とは、「ミョウバンが溶けきれなくなった水」のこと。
溶け残りが出るまでミョウバンを加えます。
耐熱性の小瓶があればミョウバンを入れて湯煎するのに便利です!
ない場合は、マグカップなどにミョウバンと水を入れて、湯煎しましょう!
ドーサ液の作り方④膠水にミョウバン飽和水を加える


膠液にミョウバン水を入れると、ドーサ液になります!
膠水にミョウバンの飽和水を大さじ1~2杯、加えます。
そして、刷毛や匙などで、よく混ぜましょう。
ドーサ液の作り方⑤ドーサ液が出来たか確かめる

日本酒色になるといいらしい。

匂いが臭くなったり、モヤっとする味になったらドーサ液の出来上がり!
よく混ぜると、膠水の匂いに変化が現れます。
「濡れた動物の香り」のような、特徴的な香りがします。
また、味にも変化があります。
「舌にまとわりつくような味」(ミョウバンっぽい味)がします。
これらの香りや味の変化があればドーサ液の完成です!
色や刷毛の通りで判断する方法もありますが、個人的には香りが一番分かりやすいですね!
- 濡れた獣臭くなる
- モヤっとした味になる
ここからは、いよいよドーサ液を塗ってみましょう!
ドーサ液の塗り方にもコツがあります。
適当に塗ると和紙を痛めてしまうこともあるんですよ。
ぜひ、ここから先も参考にしてくださいね!
ドーサ液を日本画の和紙に塗ってみよう!
ドーサ液の塗り方①紙を広げる


まずは、和紙を広げましょう!
まずは和紙を机や、床に広げます!
この時、机の上や床は必ず拭いておくこと!
キレイにしておかないと紙をドーサ液で濡らす際に、汚れが付いてしまいます。
大きい和紙にドーサ引きをするときは、使わない毛布などの上に広げると良いですよ!

キレイな毛布を取っておくと良いんだね!
ドーサ液の塗り方②ドーサ刷毛を使ってみよう!

ドーサ刷毛を使って、ムラなくぬります!
ドーサ液は、ドーサ刷毛を使って塗るのがオススメです!
ドーサ液は、実は酸性。
雑に使うと、紙や作品、刷毛自体も傷んでしまいます。
そこで使われているのが、ドーサ塗り専用の刷毛です!
刷毛表面や根本がコーティングされているため、ドーサで劣化しにくくなっています。

ドーサ刷毛なんて持ってないよ~!
という方は、普通の刷毛でも大丈夫!
まずはドーサ塗りをやってみましょう!
ドーサ液の塗り方③ドーサ液を塗る時のコツ4選


ドーサ引きでは、やってはいけないことがあります!
- ドーサ液の水たまりができる
- 濡れた状態で重ね塗りをする
紙が痛んで描きにくくなります - 紙に染み込まない
染み込まないと効き目が悪くなります
いよいよドーサ液を和紙に塗っていきます。
でも、上の三つはNG行為!
これをやってしまうと、和紙が痛み作品が長持ちしなくなります!

ドーサ液は弱酸性だから物を痛めやすいんだね!
以下の四点を意識して塗ってみましょう!
- 刷毛にたっぷり取って塗る
- 水溜まりができないようにする
- 塗れた状態で重ね塗りしない
- 一方向に塗る
最初は難しいかもしれませんが、
「紙を傷めないようにしよう!」
と意識すると覚えやすいですよ!
ドーサ液の塗り方④裏面に塗る

雲肌麻紙のように厚い紙は、紙を裏返して反対側からも塗りましょう!
より、しっかりとにじみ止めの効果が現れます!
よく乾かしてから、もう一度①~③の手順を行います。

塗ったドーサは三日くらいで安定します。

鳥の子紙のような薄い紙だと一回だけでいいよ!
ドーサ液の塗り方⑤胡粉や水干絵具を塗って中和する


胡粉を塗って、ドーサ液を中和します!
最後に、アルカリ性である胡粉や水干絵具を塗ります。
これにより、ドーサによって酸性になった紙を中和する効果があるんです。
こちらは、紙をパネルに張った後に行いましょう!
胡粉の作り方はこちらの記事で解説しています
➡【日本画】胡粉の作り方とは?塗り方、使い方を解説!【丹青指南現代語訳】
以上がドーサ液の塗り方でした!
最後にドーサ液を塗る時の注意点を、もう一度丁寧に確認しましょう!
これで失敗せずにドーサ液を塗れますよ!
ドーサ液を作る時、塗る時はここに注意しよう!

- 湿度が高いとシミになる:
冬の晴れた日に行うのがベスト! - 熱いドーサ液はテカテカになりやすい:
ドーサ液を冷ましてから塗ろう!
ドーサ液は冬の晴れた日に塗ろう!
湿度が高いとシミが出来てしまいます!
できるだけ湿度が低い冬の間に行いましょう。
また、ドーサは乾く時に時間がかかり過ぎてはいけません!
なので基本的には晴れた日に行うのがベストです。
雨の日にドーサ引きをする時は以下の工夫をしてみて下さい!
- ドライヤーを使う
- 電気カーペットの上で塗る
ちょっと邪道感はありますが、早く乾かす工夫をするのがいいですね!
ドーサ液は冷ましてから塗ろう!
ドーサ液は冷ましてから塗り始めましょう!
特に少量のドーサ液を作る際は注意です。
膠水を溶かしてすぐの熱い状態で塗ると、紙がテカテカになる可能性があります!

明礬が多すぎるドーサ液もテカテカになりますよね。

少しテカテカしてるくらいが好きだよ。
ドーサ液は大きく重ならないように塗ろう!

また、ドーサは酸性なので塗り重ねると紙を傷めます。
なので、できるだけ薄く。
なおかつ、一層で紙に浸透するように。
しかし、溜まりが出来ない程度に。
注意深く塗る必要があります。
もちろん、塗れた状態での重ね塗りもNG!
塗れた紙は傷みやすいのです。
ドーサ液の効果が薄いときは?
とは言え、ドーサの効果が薄かったときは重ね塗りするしかありません。
十分に乾いた状態で重ね塗りをしましょう。
ドーサ液の後には必ず胡粉を塗ろう!

上述したように、ドーサ液は酸性です!
これでは日本画の絵具に悪影響をもたらしたり、
和紙事態を劣化させてしまいます。

百年後にバラバラになっている可能性もあるんだ…
これを防ぐために、ドーサ液(酸性)の上から胡粉や水干絵具(アルカリ性)を塗って、紙を中和しましょう!
これによって、絵が長持ちするようになります!
まとめ―日本画のドーサ液の引き方、作り方

最後までお読みいただきありがとうございました!
ドーサ液の作り方をまとめると、このようになります!
- 薄い膠液を作る
- ミョウバンを加える
- ドーサ液の出来上がりを確認する
- 刷毛で塗る
- 胡粉を塗って中和する
また、塗る時には注意点もありましたね!
- 刷毛にたっぷり取って塗る
- 水溜まりができないようにする
- 塗れた状態で重ね塗りしない
- 一方向に塗る
ドーサ液の作り方は作家や流派によって千差万別!
他にも様々な作り方がありますよ!
色々な作り方を試して自分に合ったドーサ液作りをマスターしてみてください!
狩野派のドーサ液の作り方はこちらで解説!
➡【日本画】狩野派のドーサ液の作り方とは?効果はあるの?【丹青指南現代語訳】
➡【日本画】狩野派流!ドーサ液の引き方を解説!【丹青指南現代語訳】
ドーサ液づくりに便利なアイテムを紹介!
膠液が簡単に作れる!
⇧沸騰しない温度で膠を湯煎してくれます。
保温機能があるので、冬の制作でも膠が固まりません!
明礬はドーサ液に必須!
⇧このようにAmazonや楽天でも売っていますが、
こんなに大量に買わなくていいです。
(この商品しか見つからなかったので掲載しています。)
画材屋さんで、50gも買えば、数年は使えます。
小さい作品ならこれでOK!
小さい作品なら、完成品のドーサ液でOKです!
小瓶サイズを薄めて使えば、
かなりの面積をカバーできます!
前の記事はこちら!
次の記事はこちら!
【日本画】ドーサ液にミョウバンを入れる理由は?科学的な根拠から紹介!

