こんにちは、日本画家の深町聡美です。
鮮烈な赤でカッコいいカーマイン色!
小学校の色鉛筆になんとなく入っていて、
なんとなく知ってる「カッコいい色」
と思っていませんか?
実はこの色、知ってビックリな
- 材料はカイガラムシ!
- 語源もカイガラムシ!
- でも日本では「洋紅」と呼ばれた高級絵具!
なんです!
今回は
- カーマイン(洋紅)と虫の関係
- カーマイン(洋紅)の絵具の作り方
- カーマインが日本で親しまれた歴史
の三点を解説していきます!

Contents
カーマインと洋紅の違いとは?色味や特徴をわかりやすく紹介

英語 | carmine |
和名読み方 | ようこう |
16進数 | #BE0039 |
RGB | (190,0,57) |
マンセル値 | 2.5R 4.0/14.0 |

元々同じ原料からできた近い色です!
カーマインは鮮やかなピンク寄りの赤で、
洋紅は暗い赤…
そんなイメージがあるかもしれません。
実際、洋紅とカーマインは違う色のように
書かれることも多いですが、
カーマインと洋紅は同じ原料でできた色なんです!
カーマイン(洋紅)の原料はカイガラムシ!?虫由来の赤色の秘密


カーマインも洋紅も、原料はカイガラムシです。

げっ!気持ち悪い!

でも昔は飲食物にも使われていたそうです。
カーマインと洋紅の原料はカイガラムシ!
中年米に育つウチワサボテンに寄生している
コチニールカイガラムシのうち、
産卵前の雌のみが材料になります。
このカイガラムシをサボテンから採集し、
すりつぶすと赤い粉末になるんです。
これをコチニールと言います。
水に溶かしてライム果汁に入れると
ライムの酸と化学反応を起こしオレンジ色になります。
オレンジ色のライムジュース…
原料を知らなければ普通に飲めそうですよね。
なので、昔はコチニールを
食べ物にも使っていました!
皆さんが知っている有名ジュースも
コチニールが入っていたかもしれません…
気になる方は調べてみて下さい!

現在はコチニールアレルギーなども知られ、規制の方向にあるようです。

ある意味、昆虫食の走りだったのかも…?
↑カイガラムシの染料です
カーマイン(洋紅)ってどんな意味?語源はカイガラムシだった!


それにしてもカーマインってかっこいい名前だよね!
どんな意味なの?

それもカイガラムシという意味です!

また虫なの!?
カーマインは
「ケルメスカイガラムシから採取された染料」
というラテン語に由来しています。
さらに遡ると、サンスクリット語で
「虫が作った」を意味する言葉が元になっています。
クリムゾンもカーマインと同じ語源です。
当時は恐らく、身近な虫で簡単に作れる
鮮やかな色材として重宝されたはずです。
数々の地域と文化を超えて
大事にされた技術と生物だったのでしょう。
一方「洋紅」は、そのまま「西洋の紅色」。
後述するように南蛮貿易で渡来したことによります。
ケルメスカイガラムシ?
ケルメスカイガラムシはメキシコのコチニールカイガラムシと同様に、赤い染料が採れる虫です。このように赤の原料となるカイガラムシを「臙脂虫」と呼びます。
カーマイン(洋紅)の絵具とは?原料と特徴、使い心地を解説
現在のカーマインは植物由来ーコチニールとの違いとは?


じゃあカーマインと洋紅の材料って虫!?

今は植物の色素で出ていているから安心して!
コチニールを使った絵具には、陽光の他に
- カーマインレーキ
(クリムソンレーキ)
があります。
ですが、前述したような
コチニールアレルギーという健康被害もあり、
現在のカーマインにはカイガラムシは使われていません。
茜という植物から採れるアリザリン色素、
アロエなどのアントラキノン色素
植物が持つ色素を元に、化学的に作られています。

現在、カイガラムシを使った絵具は、コチニールという名称で販売されています。
カーマインレーキの意味と特徴ー染料を使いやすくするレーキ顔料とは

そういえばカーマインレーキの「レーキ」って何?

染料を、水に溶けないようにすることです!
さて、コチニールを使った絵具は洋紅の他に
カーマインレーキ(クリムソンレーキ)がありました。
※前述したように現在は植物から作られています。
ですがコチニールは染料なのでそのままでは
絵具として非常に使いにくいんですよね。
藍や蘇芳も染料なので
同じ問題がありました。

コーヒー染めで頑張って絵を描く感じかな…
そこで、化学の力で不溶性に変えてしまいます。
こうして不溶性になった染料の絵具を
レーキ顔料と言います。
赤い染料をレーキにしたので
- カーマインレーキ
- クリムソンレーキ
というわけです。
カーマイン(洋紅)の絵具はどんな感じ?使い心地と注意点まとめ


コチニールのカーマインは、鮮やかだけど色褪せやすいから気をつけて!
コチニールのカーマインは
透明感があり、鮮やかとされています。
しかし他の染料系と同じく
日光に弱く、すぐに褪色してしまいます。
また、黒変するという話もあります。
日本画においては江戸時代から
朱よりも透明感がある赤色として使われていました。
ただし、日本画の赤系染料の絵具は
重ね塗りをしても表面まで染め上がってきて
なんとなくピンク風になる可能性があります。

重ねても重ねても永遠にピンクが残る…
そんな記憶があります。
カーマイン(洋紅)はどうやって日本に伝わった?狩野派と江戸時代の赤い絵具


この章では
「コチニール=カーマイン=洋紅」
とさせていただきます!

現在コチニールとされる赤い粉は、
上陸当時は「洋紅」と呼ばれ、
その原名として「カーマイン」がありました。
コチニールが日本に上陸したのは
江戸時代!
1844年から1848年とされています。
蘇芳が飛鳥〜奈良時代に伝来したので、
それと比べると意外と最近な感じがしますね。
長崎に貿易にきたオランダ人によって
赤い粉末として大量に流入しました。
それが狩野派の絵師に送られ、
狩野探淵守真がカーマイン(洋紅)として使い始めます。
狩野派では臙脂に混ぜて、
紅色の花類(衣類説あり)だけに使われました。
また、藍色に混ぜて紫色としても使っています。
コチニールの価格と品質の歴史ー日本画で重宝された高級絵具とは

昔は食べ物にも使われた染料というと、
とても安価な気がしますよね…
ですがコチニールは昔は非常に高価でした!

現在も価格が高騰していて、決して安い絵具ではありません。
1g約1000円くらいです。
※参考:絵具屋三吉
江戸時代に日本上陸した後
コチニールはすぐに国内販売されました。
大正時代の日本画技法書には
杉山仙助という絵具商が販売していたという
記録が残っています。
そのときのコチニールを使った洋紅は
品質が大変よく、水を注ぐだけですぐに溶け
余計な物が沈んでいることもありませんでした。

不純物が入っていなかったんだ!
しかし、その後は徐々に
品質が落ちていってしまったそうです。
ですが、コチニールの質が落ちてしまっても
今は新原料のカーマイン、洋紅の絵具があります!
次章では日本画の洋紅を見ていきましょう!
日本画で使われるカーマイン(洋紅)ー水干絵具や顔彩で楽しもう!


日本画では水干絵具や顔彩で見かけるね!
日本画の洋紅は水干絵具や顔彩で見られます。
洋紅と書いてあったら、
「カーマインのような鮮やかな赤色」
と覚えておくと良いでしょう。

水彩絵具のように使える
チューブ絵具もあります!
まとめーカーマイン(洋紅)とは?意味・由来・虫との関係を徹底解説【日本画にも使われた赤色】

以上、カーマイン(洋紅)絵具についてまとめました!
- カーマインの日本名が洋紅!
- カーマインは鮮やかな赤!
- カーマインの原料は虫だった!
- でも昔は鮮やかで透明度が高い高価な絵の具だった!
コチニールが虫から採れる赤なのは有名ですが
それから作った絵具が高価だったことは
意外と知られていないと思います。
今回の記事で絵具に詳しくなった皆さんは、
ぜひ純正のコチニールをゲットして
染めたり塗ったりしてみましょう!
本物のコチニールは
〇絵具屋三吉
〇得應軒
などで購入できます!

アレルギー体質の人は気をつけて使いましょう。
カーマイン(洋紅)絵具まとめ
本物のコチニール!
天然染料をナチュラルなまま
販売しているメーカーです。
商品画像は一見の価値アリ!
実験やお子様との遊びにも使えそうです。
買うならセットがおススメ!
顔彩の洋紅は
12色セットにも入っています!
同梱の臙脂や朱色と比べるのも
おもしろいですよ!
チューブなら日本画も簡単!
日本画絵具はむずかしい!?
でもチューブ絵具なら
絵皿に出すだけで簡単に
日本画絵具が使えます!
水彩感覚で描きたい方にオススメ!

狩野派の技法書が語る、カーマイン/洋紅の日本画絵具

超充実なのに
古すぎて読みにくいのが難点の丹青指南
丹青指南とは、狩野派の伝統技法を記した
大正時代の本です。
このサイトでは、その本を趣味で現代語訳しています。
丹青指南の原文は
国会図書館デジタルコレクションで
無料でご覧いただけます。
正しい知識や正確な訳が欲しい方は
ぜひ日本画画材と技法の秘伝集を
お買い求めください。
この絵具はヨーロッパにおいて一種の虫から作った紅色の粉末である。
日本への伝来の始めは、弘化時代(1844年から1848年まで)オランダ人が長崎に渡来した折である。
その際この洋紅を長崎奉行の手で狩野家に送ったのを、狩野探淵守真のときから試用した。
その用途はいたって少ないが、色相がことさらに美麗なので、試用して以来狩野家では、紅色の花類※に限って使い、臙脂に混ぜて使用した。
また、その他「ウルミ」と呼ばれる紫色の代用絵具には藍汁に混ぜて使用した。
そして、編者が狩野家に入った当時には絵具商の杉山仙助は洋紅を商品として発売している。
その洋紅は品質が大変よく、少量の粉末を絵具皿に取り分けて水を注ぐだけですぐに溶ける。
沈殿物のようなものは皆無である。
当時の洋紅は、ひどく高価なものであった。
ただし、この洋紅も絵具商が言うには維新前の品はなくなったそうだ。
洋紅は年々粗悪になって、現在の品などは、とるにたらないとのことである。
※画材と技法の秘伝集では衣類とされている。
参考(一部)
・ケルメス|wikipedia
・コチニール色素|wikipedia
・色の名前はどこからきたか
・日本画画材と技法の秘伝集
・日本画用語事典
・丹青指南
・日本色彩事典|武井邦彦



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