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『塗埋』(ぬりつぶし)ー日本画の伝統着彩テクニックを解説!

この記事で分かること
  • 塗りつぶしは線を活かさず、消してしまう塗り方!
  • ムラなく塗るにはコツが要る!
  • 他の技法と組み合わせるのがオススメ!



こんにちは、日本画家の深町聡美です!

突然ですが、皆さんは古の日本画絵師たちが
どうやって着色していたか、知っていますか?

日本画には、時代を超えて受け継がれてきた
さまざまな伝統的な着色技法が存在します。

これらは一見すると難しそうですが、
実は見知った塗り方もあるんですよ!

今回の記事では、

『丹青指南』という近代狩野派の技法書をもとに、「塗りつぶし」という彩色方法を掘り下げていきます!

ぜひ、この記事を通して
「日本画って意外と普通じゃん!」
と親しんで頂ければ幸いです!

日本画の伝統的な着色技法はいろいろあります!

昔の日本画はどうやって色を塗っていたの?

突然、伝統的な日本画の塗り方と言われても、

「日本画の塗り方テクニックって何?」
って感じですよね。


多くの方が
「複雑で難しそう」
と感じるかもしれませんが、
これらの技法は現代まで続いてきた
色の塗り方なんです!


『丹青指南』という近代狩野派の本を見てみましょう。

主な着彩方法として
「裏具」「彫塗り」「塗りつぶし」「塗限り」「付け立て」
が挙げられます。

  • 裏具
    絹に描く際に裏側から色を塗る技法。
  • 彫塗り
    線を活かしながら塗る技法。
    線を残してを塗ることで、線を際立たせる。
  • 塗りつぶし
    線の上にも色を塗る技法。
    線を隠して塗り進める。
  • 塗限り
    彫塗りに加筆しないでおいておく技法。
  • 付け立て
    輪郭線を描かずに、色を直接塗りつける技法。

それぞれ特性があり、
絵の描き方や表現で使い分けられます。


今回、この中から「塗りつぶし」をピックアップします!

彫塗り、塗限りの
解説はこちら!

➡日本画の着色技法ー彫塗(ほりぬり)と塗限り(ぬりきり)をやさしく語る!


『塗りつぶし』とはどんな日本画の技法?みんな知ってるはず!

塗りつぶしって、あの塗りつぶし?

DARENIHO

みんなが知っているフツーの”塗りつぶし”です!

「塗りつぶし」とは、日本画の塗り方のひとつ!

墨で描いた線を残さず、上から色で塗りつぶしてしまう塗り方です!

この方法は、どんな線であっても、
彩色で完全に覆い隠すというもの。

「塗りつぶし」
は他に

  • ころし塗り
  • 平塗り

と呼ばれる事もあります。


『図解日本画用語事典』を引いてみると、
このように書かれています。

平塗り
絵具のむらをつくらずに刷毛 や連筆で彩色をする技法。

『図解日本画用語事典』


つまり、線を塗りつぶして、マットな色面にする
ということなのが分かりますね。

僕たちが普段使っている「塗りつぶし」と同じ意味なんだ!



この技法の要点は、
墨で描かれた線を全く活かさないこと。

一面を均一に彩色することで、

  • シルエットを強調する

効果が生まれるんです!



この線を消す行為を、
日本画では「あびせる」と言います。



ただ、彫塗りと同じく、
こちらも言うは易し!

  • 輪郭の線を残さず丁寧に塗る
  • 色むらが出来ないようにする

には、繊細な作業が求められるのです!

DARENIHO

連筆を使うと刷毛と比べてムラができにくいですよ!



塗りつぶしを使う場所ー狩野派はここに使っていた!

塗りつぶしってどこにでも使えそうだけど、昔は使う場所が決まっていたの?

DARENIHO

そのような塗り方もありますが、塗りつぶしはどこでも使えます!



狩野派の描き方指南書『丹青指南』では、
塗りつぶしの技法はどこでも使える
と書かれています!

人物であれば顔、および身体に。服装であれば袴や下着の類、もしくは薄絹などに。
そして鳥や動物ならば全身、草木ならば花や蕾に。その他、家屋の構造、木材のすべてなど、あらゆる方面に行う塗り方です。

現代語訳 丹青指南

人物や衣服であれば

  • 身体
  • 下着
  • 薄絹

動物、植物であれば

  • 全身


そのほか、家屋や木材など、ありとあらゆるところに
この技法は使われているんですね!

DARENIHO

影や加筆を付けるための下塗りにも使われています

そうか!塗りつぶしをした後も描き加えられるんだね!



塗りつぶしにもコツがある!?

でも日本画で塗りつぶしって結構大変だよね。

そんなあなたのために、
『日本画 画材と技法の秘伝集』では
他の文献を引用してコツが紹介されています!

  1. 絵具は程よくかきまぜて、中間部分の絵具を使う
    (上澄や沈殿はダメ)
  2. 筆を寝かせて塗る
  3. 絵具を溶いたら、浮かんだゴミを取り除いて使う
    (筆で浮ぶ塵をつき出して使うとのこと)
  4. 彫塗りをして乾いた後、透明色orごく淡い色で塗りつぶしをする



塗りつぶしは単体でも使うことが出来ますが、
④のように、他の技法と組み合わせることで
真価を発揮するテクニックです!


「全部塗りつぶすのは怖い!」


と言う時も、必要ならば
勇気をもって塗りつぶしをしていきたいですね!


DARENIHO

破壊と創造は紙一重!


まとめ:『塗埋』(ぬりつぶし)ー日本画の伝統着彩テクニックを学ぼう!


最後までお読み頂きありがとうございます!

以上が「塗りつぶし」の解説でした!


数ある着色技法の中でも「塗りつぶし」は、
以下の特徴を持つテクニックでした。

  • 現代でも言葉が残る、馴染みある技法
  • 他の塗り方と組み合わせると良い技法

そして、
「彫塗り」とは対照的に、塗りつぶしは線を活かさず、
一面を均一に彩色する特徴を持っています。



さあ、ほかにも日本画の伝統的な
着色方法はたくさんあります!

次回はまた別の塗り方を解説しますので、
ぜひまたいらしてくださいね。


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丹青指南現代語訳ー彩色仕方

狩野永徳唐獅子図
狩野永徳 – [1], パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4210868による

ここからは狩野派の隈取の方法について原文で見てみましょう!



こちらの原書は『丹青指南』という絵の描き方の本です。

原書を読むにはどうすればいいの?


そんな時は国立国会図書館のサイトでチェック!

全文を無料で読むことが出来ます!


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一、塗埋(ぬりつぶし)

この「ヌリツブシ」という塗り方は
どんな図案に限らず全てを淡い墨で正確に、
または粗い線で描いた素描を塗り「ツブシ」する塗り方である。


人物であればその顔、及び身体、
服装であれば袴や下着の類、
もしくは布の薄絹など。

そして鳥や動物ならば全身。

草木ならば花及び蕾。

その他家屋の構造、木材のすべて、
あらゆる多方面に施す塗り方である。

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