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日本画の「黛」「まゆずみ」とは?やわらかい黒を描くにはこの技法!


こんにちは、日本画家の深町聡美です。

今回は、日本画の伝統的な技法「まゆずみ」を解説いたします!


「日本画だとグラデーションが出しにくい!」
「もっとふんわりした感じの日本画を描きたい!」
「日本画だけど、細かいところをふんわり描きたい!」


と思っている方必見です!

  • 日本画の黛とはなにか?
  • 黛がフンワリ描けるワケ
  • 黛の材料とやり方

この三つのポイントでまゆずみをマスターしましょう!


今回も狩野派の日本画技法書「丹青指南」を一から現代語訳し、参考にしています!
狩野派に思いを馳せながら、最後までお付き合いください!

日本画の古典技法「黛まゆずみ」とは?

©DARENIHO

まゆずみってなに!?

黛(まゆずみ)って、聞きなれない言葉ですよね。

黛とは、簡単に言うと、「ぼかしやすい黒色絵具で影が付けれるよね」という話です!


日本画で使う黒い絵具といえば…
墨が一番に思い浮かびますよね。



でも思い出してみて下さい。


墨でキレイにぼかすって難しくないですか?

  • もっとフンワリしたグラデーションにしたいのに、うまく滲まない
  • 滲みが広がり過ぎてコントロールできない
  • 墨の黒がハッキリしすぎてしまう


こんなことも多いですよね。


そこで、昔の日本画で使われたのがまゆずみという技法です!


黛を使えば、炭や岩絵具で一生懸命ぼかすより、
はるかに簡単キレイにぼかしができるのです!

日本画も簡単にぼかせるんだ!やってみたい!


それではまず、黛で使われる絵具の正体を確かめてみましょう!



日本画の「黛まゆずみ」とは、眉墨=アイブロウ=煤だった!


皆さんは眉毛を整えますか?


日本では平安時代から江戸時代まで、女性は「眉墨まゆずみ」という化粧を行っていました。
眉毛をすべて抜き、すすを塗ってアイブロウにしていたのです。

眉墨って、まゆずみと同じ読みだね!


実はまゆずみは、ほぼ化粧の眉墨と同じです。



眉墨の材料はすすでしたね。
日本画の黛の技法も、煤を素材として使うのです!

ところですすってなに?

木を焼いたときに出る、黒い煙的なものです。


お正月のどんど焼きなどに行くと、大きい木が燃えているのを見ることが出来ますね。


黒い煙がモクモクと上がっているのを見ることが出来ると思います。

その煙が黒いのは、が含まれているため!


木などの有機物が不完全燃焼を起こすと、細かい炭素の粉ができるのです。

炭素の粉ってことは、鉛筆の芯と似たような成分なんだね!



ここでは、
木などを燃やした時に発生する煤(黒い微粒子)が黛の技法に使われる

と覚えていてください。

日本画の「黛まゆずみ」とは眉毛を描く時しか使えないの?

UnsplashSeiが撮影した写真

まゆずも=眉墨なんだね。
つまり眉毛を描くの専用の技法ということ?


黛という名前ですから、眉毛専用と思いがちです。


でも、黛の技法は、眉、髪、ヒゲにも使われました


なめらかで柔らかい表現をする場面で自由に使えるのですが、特に黒を活かした場所に使われますね。

黛は、通常の墨では得られない滑らかで自然な描写を可能にし、顔や髪の表現に温かみを加えることが出来るのです!

それでは、ここからは、黛を行う具体的な方法を見てみましょう!

日本画技法「黛まゆずみ」をするための材料と準備

まゆずみをやってみるぞ~!必要な道具は何かな?

材料

  • 付木、カエデ、ヒノキ、ツゲ、ヤナギ、クサマキなどの朽木
  • 絵皿

ここでは狩野派の伝統技法を記した丹青指南たんせいしなんという本に書かれているやり方を紹介します!


材料の一覧に様々な木の種類を並べましたが、丹青指南では「付木」が使われています




付木は江戸時代のマッチですね。

今でもキャンプグッズとして楽天市場で販売されています!

入手も簡単ですぐ実践できますね!


その後の手順も簡単!

  1. 付木を3cmくらいに割く
  2. 燃やす
  3. 煙の上に絵皿をかざす
  4. すすをGET!


非常にシンプルですね!

煤は「掃墨はいずみ」ともいいます。



もっと簡単に日本画の「黛まゆずみ」をする方法とは?木炭を使おう!

Image by StockSnap from Pixabay

火を使うのはちょっと……


「ていうか付木の時点でハードルが高いです

という方がほとんどですよね!



手順がシンプルでイメージしやすいだけに、「より簡単にできないのか?」と思うはず!


現代、まゆずみとして使えるのが「木炭」なんです!

特に、柳の木炭がおすすめです!



柳の木炭は画用木炭としてメジャーで、どこの画材屋さんでも入手可能。


さらに、「日本画画材と技法の秘伝集」という「現代最強の日本画解説本」にも柳の木炭での黛が紹介されています!


つまり、柳の木炭で日本画の黛技法ができる!

ということなんです。



ちなみに「日本画画材と技法の秘伝集」には、カエデ、ヒノキ、ツゲ、ヤナギ、クサマキを燃やして墨にする話も載っています。


いろんな木を燃やして煤を作っていたんですね。

日本画で「黛まゆずみ」を描く方法

すすでどうやって描くの?



さて、絵皿に煤を集めた所で、どうやって塗るのでしょうか?
に混ぜないといけないのでしょうか?

答えはNO!

絵皿に煤を集めたら、それを絵に塗るだけ!

乾いた細筆の先で煤をとり、
こするように撫でつけて、数回重ねる。

たったこれだけで、まゆずみの技法が完成です!

化粧のように、乾いたブラシで重ねて色を調整するんだね!


日本画の「黛まゆずみ」をやるメリットは?ふんわりする効果がある!

狩野正信 – http://d-archive.kyuhaku.jp/da/collection/info/id/2/, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=33137159による

結局なんでまゆずみをするんだっけ?
メリットはなんだっけ?

やわらかいグラデーションを作るためでしたね。


黛の最大のメリットは「やわらかい、滑らかな、繊細な黒いグラデーションが作れる」点でした。


丹青指南では、黛の描き方を知らないばかりに微妙な出来になった絵の話がでてきます。

この眉墨の描き方を知らないで、普通の淡い墨で隈取した眉墨を公開出品の絵でときどき見かけますが、その描き方では隈の消え方がなめらかではないので、その顔も柔和な雰囲気が出なくなってしまいます。

市川守静「丹青指南」(筆者現代語訳)

しかし木炭や煤を使った方法なら、やわらかい表情も簡単に描けるのです。


これを読んでいる皆さんは、もう黛ができますよね!

つまり柔和な表情も描けるということです!

「黛まゆずみ」が使われた日本画は?使用例を紹介!

↑なぜかAmazonにあったので参考として掲載します

参考になる絵はないのかな?

丹青指南では滝本坊松花堂が紹介されています!

黛の技法を普段から絵に使っている人が、滝本坊松花堂たきもとぼうしょうかどうです。

彼は江戸時代初期の真言宗の僧侶で、書道家、画家、茶人としても知られています。


僧侶としての位も、もちろん高いのですが、狩野派の技法書である「丹青指南」では黛を使った画家として紹介されています。


彼の布袋の頭髪、ヒゲなどはまゆずみの方法を使っているため、非常に柔和な顔つきになっているそうです!



ただ、「偽物はこの限りではありません」ともきちんと書かれています。


さて、Amazonやヤフオクの作品は本物なのでしょうか!?


皆さんも考えながら見てみて下さいね!

松花堂弁当!?
日本料理でよくある、四つに仕切られた箱入りの弁当「松花堂弁当」。
これは滝本坊松花堂の名前に由来します。
滝本坊が四つ切の箱を愛用していたため、敬意をこめてこの名前がつけられたのだとか!



滝本坊松花堂の作品は、松花堂昭乗データベースで見れます!


実物を生で見たい方は、松花堂庭園・美術館に行くのがおススメです!


真贋の鑑定もできるかも!?



まとめー日本画の「黛まゆずみ」とは?ふんわりした黒を描くにはこれをやれ!

以上、日本画で行われてきた「まゆずみの技法」の紹介でした!


黛はすすを絵具にして描いたシンプルな技法!

でもフンワリぼかしが効いた、やわらかい絵を描くことが出来る、日本画の必須技術だったのです!

黛のやり方
  1. 付木を燃やす
  2. 煤を絵皿に集める
  3. 乾いた筆で取り、絵に塗る




現在は柳の木炭を使って同じ効果を作ることができます!


如何でしたか?
日本画に木炭を使うなんて意外だったかもしれませんね。


皆さんもぜひお試しいただき、ふんわり黛を体験してみて下さいね!


すぐにまゆずみ!


すぐにぼかせる木炭です!
様々な日本画技法書で
柳の木炭が使われています。


燃やして作ろう!


なんと、まだ現存しました!
自分で燃やして煤を作れます!




日本画を学ぶなら必須の一冊

日本画の「何それ?」を解決!



丹青指南の原文はこちらの国会図書館から全て無料で見れます。

丹青指南ー国立国会図書館

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