- 金泥の発色が良くなる使い方を紹介!
- 箔からオリジナルの泥を作る方法!
こんにちは、日本画家の深町聡美です。
皆さんは金泥、使っていますか?
誰もが知っている日本の名画を彩ってきた金泥。
実は使い方にコツが要る画材なんです!
膠で溶いて混ぜただけではキレイな発色になりません。
正しい使い方を読んで、
あなたの作品をさらに美しくしませんか?
今回は
- 日本画の金泥の使い方
- オリジナル泥の作り方
を解説します。
最後まで読んで、
制作に役立てて頂ければ嬉しいです!
⇒金泥って知ってる?日本画で使われる輝く装飾の秘密と代替アイテム!

Contents
日本画の金泥とはどんなもの?


「金泥」ってなに?なんて読むの?

「きんでい・こんでい」と読みます!
「消し粉」「消」と呼ぶ事もあります!
金泥とは「きんでい」「こんでい」と読む、
非常に細かい金色の粉です!
原料は金箔!
金箔を細かい粉にしたのが金泥なのです!

箔ではなく金属の塊を細かくした物が「粉」(ふん)です。
金泥は日本画絵具と同じように
膠を混ぜて使うことが出来ます。
関東では「消し粉」(けしふん)とも呼ばれます。
日本画の金泥の色の種類はこんなに沢山!

箔は硫化や染色で色を変えることが出来る

でも金泥って金色しかないんでしょ?
僕はカラフルなのが好きだなあ。
一口に金泥、銀泥と言っても、
原料になる箔は多数の色があります。
そのため、意外にも
泥の色数はバラエティに富んでいます!
多数ある泥の中でいくつかの色をリストにしました。
ぜひチェックしてみて下さい!
純金が多い泥の色
1号色 | 純金97.66%,純銀1.35%、純銅097% |
2号色 | 純金96.72%,純銀2.60%、純銅0.67% |
3号色 | 純金95.79%,純銀3.53%、純銅0.67% |
4号色 | 純金94.43%,純銀4.90%、純銅0.66% |
金と他の金属を混ぜて作った色
純金泥 | 純金90%程度に純銀、純銅 | 焼色とも呼ばれる |
青金泥 | 金75%、銀25% | いろよし、常色(つねいろ)とも呼ばれる |
水金泥 | 金58.59%、銀41.4% | 定色(さだいろ)、水色とも呼ばれる |
白金泥 | プラチナ | |
純銀泥 | 銀 | |
仲色 | 純金と青金の間の色 | 今日では少ない |
銀を硫化させて作った色
薫銀泥1号 | 暗い暖色系の灰色 |
薫銀泥2号 | やや暗い暖色系の灰色 |
薫銀泥3号 | 暗い青緑 |
薫銀泥紺 | 暗い青色 |
薫銀泥紫 | 暗い赤紫 |
薫銀泥赤紫 | やや暗い赤紫 |
薫銀泥円子 | 銅のような赤茶 |
薫銀泥茶 | 山吹茶色 |
薫銀泥淡茶 | 黄色みのある明るい茶色 |
薫銀泥焦茶 | やや暗い茶色 |

金属の比率や硫化で、こんなに沢山の色が作れるんだね!

他にもラメ感がカッコいい、とてもカラフルな泥が開発されています!
さらに詳しく色を知りたい方はこちら!
それでは次の章で金泥の使い方を見てきましょう!
単に膠と混ぜるだけでは金の無駄遣い!
正しい使い方で鮮やかな金色を生み出して下さいね!
日本画の金泥の基本的な使い方


ここからは金泥の基本的な使い方を解説していきます!
まずは、
この五つの材料を用意します!
そして以下の手順で金泥を練り混ぜます。
- 金泥を皿に入れる
- 薄い膠を入れて練る
- 焼き付けを行う
- ぬるま湯を入れて上澄みを捨てる
- ②~④を数回繰り返す
- 膠と水を混ぜて使う

具体的な手順を見てみよう!
①金泥を皿に入れる

まずは、絵皿に金泥を入れましょう。
こぼさないように気を付けて、
息を止めて慎重に行います!
②薄い膠を入れて練る

薄い膠を少量入れて練ります!
多すぎると次の工程に時間がかかります。
膠で金泥がじゅうぶんに湿る程度がベスト!
③焼き付けを行う

絵皿ごと保温トレイなどで加熱し、
干上がらせます。
これを焼き付けと言います。
④ぬるま湯を入れて上澄みを捨てる

焼き付けを行った皿を覚ました後、
ぬるま湯を入れます。
少し待って金泥が沈殿したら、
上澄を捨てます。
⑤②~④を数回繰り返す

2~4を、2,3回繰り返します。
何度も行うことで、
金泥の発色は良くなっていきます!
⑥膠と水を混ぜて使う

金泥の発色が良くなったら、
少量の薄い膠と水を混ぜて使います!
濃い膠では発色が悪くなってしまいますので
多少薄めの膠で溶きましょう。
出来上がった金泥は、通常の岩絵具と同様に
筆や刷毛ですくい取って使います。

あとは普通の日本画絵具と使い方は一緒なんだね!

金泥の使い方手順はほかにもあります!
金泥の使い方は、
今回紹介したやり方の外にもあります。
焼き付けを行ったり、膠で溶いたり、
おおよそは同じですが、やりやすそうな方で
やってみるのが良いですよ!
- 金泥を皿に入れる
- 薄い膠を少量ずつ入れて練る
- 絵皿ごと保温トレイなどで加熱し、焼き付ける
- 再び薄めの膠液を入れて練り混ぜる
- ぬるま湯を加えて良く練り混ぜる
- しばらく置き、上澄みを捨てる
- 少量の膠と水を入れよく混ぜて使う

好きな方で試してみてね!
狩野派はこうやっていた!昔の金泥の使い方!


コンロや保温トレイがない時代はどうやって泥を使っていたの?

それでは、狩野派の金泥の使い方を見ていきましょう!
- 絵皿にやや多めの膠を溶かす
- 乾いたら水をすくって湿らせる
- 皿を火であぶって練り混ぜる
- これを二、三回繰り返しよく混ぜる
- 充分に水を入れて溶いて使う
基本的な作り方は現代と同じですね!
金泥を作る絵皿は
「粗焼きで、なるべく大きい物」
と指定されていました。
ここからは、具体的な手順を見ていきます。
①絵皿にやや多めの膠で溶かす

まず「やや多くの膠で絵皿に溶かす」
必要があります!

現代では「少量の膠」でしたが、この頃は「やや多くの膠」という表現がされています。
そして、現代と同じく
絵皿に入れた金泥を中指と薬指で
丁寧に練り混ぜます。
②乾いたら水をすくって湿らせる

指で混ぜていると、摩擦熱で乾いてきます。
水が減ってきたら人差し指で水をすくい、
水を中指から伝い落とし、皿を湿らせます。
③皿を火であぶって練り混ぜる

充分に練り混ぜたら、皿を火で炙り
もう一度練り混ぜましょう。

皿が冷めてから練ってね!
④これを二、三回繰り返しよく混ぜる

①~④をを二度、三度と繰り返し、
さらによく練り混ぜましょう。
金泥が良く練り混ぜられ、発色が良くなります。
⑤充分に水を入れて溶いて使う

ちょうど良く練れたら、
先ほどのように人差し指で水をすくい、
中指から伝い落としつつ、
充分に水を注いで溶いて使います。
これで金泥が完成です!

以上が狩野派の金泥の使い方でした!

昔から変わらない使い方なんだね!
欲しい色がない!?金泥を自分で作る方法を伝授!


好きな色の箔はあるんだけど、泥は売っていないみたい。

それなら自分で泥を作ってみるのはどうでしょうか?
狩野派の技法書『丹青指南』では、
好きな色の箔で泥を作る方法が掲載されています!
この技法は箔を細かく解(ほぐ)して作るので
「箔解」(はくけし)と呼ばれています。
この章では自作の泥の作り方を、
現代語訳をしながら解説いたしますね!

手順は以下の通りです。
- 絵皿に大量の膠を入れる
- 火で温めて皿一面に膠を広げる
- 金箔を一枚入れて指で擦って細かくする
これを繰り返す - 乾いてきたら水を加え、火で温める
- 少量の膠を入れてさらに力を入れて練る
- 垢抜きを行う
- ①~⑥を三、四回繰り返す
まずは箔を用意しよう!

まずは原料となる箔を用意しましょう。
数種類の箔を混ぜて使ってもOKです!
オリジナルの泥を作ってみましょう!
50枚以上あると充分な泥がつくれますよ。
少ないと発色が悪くなるので、多めに用意しておくのがいいですね!
狩野派では、基本の色として「青金泥」を使っていました。

当時は、青金泥以外の泥は売られていなかったようです。

だから自分で箔をほぐして作っていたんだね!
①絵皿に大量の膠を入れる

まずは絵皿に多量の膠を入れます。
絵皿はできるだけ大きいものを使いましょう!
箔をたくさん入れるので小さいと溢れてしまいます。

かさが増えていくことを考えて、大きい絵皿を使うのが良いね。
②火で温めて皿一面に膠を広げる

火で温めて動かしゆすり、膠を皿一面に広げるように流します。

現代では保温トレイやコンロなどを使いましょう。
③金箔を一枚入れて指で擦って細かくする

箔を一枚取って皿に入れ、それを中指と薬指でゆっくり擦ります。
この際、小指を使っても構いません。
すると箔は細かいきれぎれの破片になります。
さらに、もう一枚の箔を取ってその上に置き、
同様に数回擦ります。
④乾いてきたら水を加え、火で温める

指で擦っていると摩擦熱で水が乾いてきます。
皿に水を入れ、また火で温めましょう。
⑤少量の膠を入れてさらに力を入れて練る

④の皿に少し膠を入れて、二、三回練ります。
そして指に強く力を入れて、更によく練ります。
箔片が徐々に粗い粉となったら、第一回目の箔解が終了です。

細かくなるまで指で擦るということだね!
⑥垢抜きを行う

指で擦っていると、手の汚れで発色が落ちてしまいます。
そこで、「垢抜き」という方法で箔をきれいにしましょう!
指で摩擦した際に汚れた金色は、
垢を除去することで発色が回復します。
- 箔解をした皿に白湯か水を充分注ぐ
- それを火にかけて煮沸する
- 火からおろし、蓋をして一晩置く
- 皿の水を捨てる
- その皿を火にかけて乾かす

箔の油分を落として綺麗にするんですね。
⑦①~⑥を三、四回繰り返す

垢抜きをした後、再度皿を温めます。
そして、多量の膠を入れて、
4回ほど繰り返し擦りましょう。
2、3回で少し泥状になり、
3、4回でほぼ金泥を完成させられます。
まだ完全に金泥になっていないときは、
繰り返し擦って金泥を作り上げましょう!
注意
普通の金泥・銀泥でも、
箔が汚れることがあります。
その時はすぐに煮沸して
垢抜きをして下さい。

これでオリジナルカラーの金泥が出来上がりだ!
まとめー日本画の神髄を極める!金泥の使い方とオリジナル色の泥作り方法を完全解説

最後までお読み頂きありがとうございます!
今回は金泥の使い方と作り方を解説してきました。
- 金泥は焼き付けを行いながら何度も練って作る!
- 金箔からオリジナルの金泥を作ることが出来る!
金泥は膠と混ぜて
普通の日本画絵具のように使えます。
ですが、それでは良い発色は得られないのでしたね。
そのために「焼き付け」を行い、
何度も練る必要がありました。
また、泥は箔を使えば好きな色が作れました。
今回の記事が参考になれば嬉しいです。
みなさんもぜひ、
金泥を使って作品を作ってみて下さいね!

描いた作品は、SNSやコメントで見せてくれると嬉しいな!
泥の使い方はもちろん
日本画のすべてが分かる!
当ブログが現代語訳した日本画技法書も
よろしくお願いします!
金泥をもっと知りたいあなたへ!
⇒金泥って知ってる?日本画で使われる輝く装飾の秘密と代替アイテム!



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