- 日本画の絵具も混色して使える!
- 茶色や苔色、淡い色など、様々な混色がある!
- 難しい混色方法もあるけど、手順通りすれば色を作れる!
こんにちは、日本画家の深町聡美です。
皆さんは日本画を描いていますか!?
今回は日本画絵具を混色して作れる色をご紹介します!
「日本が絵具は混色できない」
と言われることもありますが、
細かい粒の絵具なら混色できちゃうのです!
今回は江戸時代末期の狩野派の指南書
「丹青指南」を元にしているので、
めちゃくちゃマニアックな内容です!
それでも今後の制作に活かせそうな技術ばかり!
ぜひご活用して頂ければ嬉しいです!

Contents
日本画絵具の混色比率はケースバイケースで!


混色の時、各色の比率は決まっているの?

今回は明記しません!
この記事では「丹青指南」という
江戸末期の狩野派の指南書を元に解説します。
ですが、こちらの本には色の混色比率は書いてありません!
この混合絵具は、全種の混色比率が一様に同じではない。
丹青指南
〜混ぜる色料の量に差があるのは、
その図柄(描くもの)によって違う色が必要なためである。
そのため、それらの割合を記す方法がない。
つまり、描くものやその時々で配分は違うので
書けないということです。
ですが、一部の混色が難しい絵具では
詳細な説明も付けました!
ぜひ最後まで読んで参考にして下さい!
草汁とはどんな日本画の伝統色?ー落ち着いた黄緑

- 藍汁
- 藤黄

藍汁と藤黄は現代では藍色と黄色に当たります!
藍色と黄色で黄緑色になりますね!
草汁は藍汁に藤黄を混ぜた絵具です。
その用途は至って広く、多くの方面に使うとされています。
落ち着いた黄緑なので、
- 苔
- 草
- 山
- 池
など様々な自然物に使えますね。

苔色のような、日本風の落ち着いた黄緑です。
ウルミとはどんな日本画の伝統色?ー黒っぽい紫

- 藍汁
- 臙脂
(上質であれば洋紅も可)

現代では藍色と赤色です。
混ぜると紫色になりますよね!
この絵具は藍汁に臙脂
(良い質の物であれば洋紅でもよい)
を混ぜた絵具です。
紫色の代用として使われました。
少し黒っぽい紫色になります。
合わせ黄土とはどんな日本画の伝統色?ーオレンジ色

- 藤黄
- 丹

現代では黄色と赤にあたります。
混ぜるとオレンジ色になります!
この絵具は藤黄と丹とを混ぜたもので、
橙黄色をしています。
黄土の具を塗ったものに、
影をつける時に使われました。

黄色いものに影をつける時、オレンジ色を使うイメージですね。
もちろん、オレンジ色のものを描く時にも使えますよ。
丹墨(だんずみ)とはどんな日本画の伝統色?ー赤焦げ茶

- 丹
- 墨

今で言うと赤と黒です。
セピアに近い色になるそうです。
狩野派では、この絵具は
着色やペン入れ(骨描きといいます)
など様々な用途に用いていました。
狩野派の絵師たちが常に絵具皿にキープしていた程、重要な色だったそうです。

作り方が難しいので手順も解説いたしますね!

- 丹の上澄みを絵具皿に取り分ける
- 弱火にかけて半分ほど乾かす
- 膠を入れて丁寧に練る
- 指先に濃い墨をつけて、
その指でさらに練る - 少し水を加えて、火で炙る
- 丹と墨が混ざるまで練る
- 水で溶いて使う。
この絵具はしばらく置いておくと、
墨が浮いて丹が沈み、分離します。
このとき、
最初によく練って混ぜていれば、
筆で混ぜるとすぐ元に戻せます。
乾いてしまった時は
皿ごと少し炙り、少量の膠を入れて
よく練って、水で溶いて使います。
丹墨?朱墨?
室町時代、狩野派二代目の狩野元信の頃は
朱に墨を混ぜて朱墨と呼んでいました。
しかし、江戸時代初期の狩野探幽の頃に
朱を丹に変更しています。
それでも引き続き
「朱墨」と呼ばれていました。

狩野探幽までの朱墨とは違うんだね!
艶墨の絵具とはどんな日本画の伝統色?ー艶のある黒

- 胡粉の上に墨を塗る

色というより、艶出しの方法だね!
艶墨は「つやずみ」と読みます。
これは光沢ある黒の塗り方になります。
やり方は簡単で、
胡粉の下塗りの上から濃い墨を塗るだけ!
こうすると、ツヤツヤ輝く漆のような光沢
が出来上がります!

烏帽子や漆器の表現に使われていました。
朱肉色とはどんな日本画の伝統色?ーペールオレンジ

- 胡粉
- 朱の黄目(朱の上澄み液)

現代では白と赤を混ぜた感じです。
ペールオレンジのような色です。

この絵具は、胡粉が入っているので
乾いても練り直して使えません。
朱肉色は「しゅにくしき」と読みます。
この絵具は、胡粉に「朱の黄目」と呼ばれる
朱色を溶いた時の上澄みを混ぜたもの。

専門的なことはともかく、
「白絵具にオレンジ絵具の上澄みを混ぜた感じ」
と思っておいてね!
日本人や中国人の肌の色に使っていました。
ただし、偉人にはこの色が合わないそうで、
その場合は代赭なども混ぜていたそうです。

偉人ってなんだろう…?

黄目が乾いていたら、よく練り直して使って下さい。
白緑茶とはどんな日本画の伝統色?ー不透明なお茶緑

- 白緑青
- 藤黄
- 胡粉
- 墨 少々

ペール黄緑に、白、黒少しを混ぜたイメージです。
不透明な緑色になります。

この絵具も、胡粉が入っているので
乾いても練り直せません。
白緑茶は、「びゃくろくちゃ」と読み、
白緑青を元にして
藤黄、胡粉、少しの墨を混ぜたものです。
つまり、
- ペールな黄緑に灰色を混ぜた色
と考えるとまだ分かりやすいかもしれません。
伝統的な日本画では、
能舞における翁の服の地の色に定められている他、
日本および中国男女の服装にも用います。

白緑茶、黄土茶、丹墨茶は混ぜにくいので
使用にはコツが要ります!
白緑茶、黄土茶、丹墨茶は
軽い顔料と重い顔料を混ぜた絵具です。
なので、混ぜるのも使うのも
非常に難しいとされています。
- 絵皿に多めに水を溶かし、白緑青を指で練る。
- 指先に濃い墨を付けて、藤黄、胡粉、白緑青と丁寧に練り合わせる。
- 乾いてきたら水を加えてよく指で練る。
- 絵具がよく混ざったら水で溶いて使う。

塗るときにも手順があります!
- 筆で絵具を混ぜつつ、適量を筆につける。
- 塗り伸ばさないように、筆を立てて少しずつ塗る。
- 絵の具の筆がなくならないうちに、
絵具を付け足して徐々に塗る。
この三点に気をつければ、ムラのない彩色が可能です!
この方法ではなく、筆継をテキトウに
塗り伸ばしてしまうと色ムラができてしまうので注意!

岩絵具や金泥、銀泥もこの塗り方です!
黄土茶とはどんな日本画の伝統色?ー不透明なココア色

- 黄土
- 藤黄
- 丹
- 胡粉
- 墨

黄土色、黄色、赤、白、黒を混ぜた、複雑な絵具だね!
ココアっぽい色になるよ!

この絵具も、胡粉が入っているので
乾いても練り直せません。
黄土をメインにして、4色もの顔料を加える
複雑な絵具です。
溶き方と塗り方は白緑茶と同じ!
- 絵皿に多めに水を溶かし、黄土を指で練る。
- 指先に濃い墨を付けて、藤黄、胡粉、丹、黄土と丁寧に練り合わせる。
- 乾いてきたら水を加えてよく指で練る。
- 絵具がよく混ざったら水で溶いて使う。
- 筆で絵具を混ぜつつ、適量を筆につける。
- 塗り伸ばさないように、筆を立てて少しずつ塗る。
- 絵の具の筆がなくならないうちに、
絵具を付け足して徐々に塗る。
この絵具は、高砂という能の演目に登場する
老爺と老婆の服に使っていました。
また、能の「間の狂言」でのシテ(主役)や
そのお付きが着る衣装の地の色などに
使われました。
ほかの色同様に、
日本や中国の男女の服装にも使えます。

能の演目とも関わりが深い色なんだ!
丹墨茶とはどんな日本画の伝統色?ー不透明な黄色い茶色

- 丹墨
- 藤黄
- 胡粉

前に作った丹墨(セピア色)に黄色、白を混ぜるよ。

これも胡粉入りの絵具です。
乾いたら作り直しましょう。
この色は「だんずみちゃ」と言って、
丹墨を元にした絵具です。
丹墨は丹と墨を混ぜた、
セピア色、茶色でしたね。
これに不透明な白と、透明感ある黄色の絵具をまぜた色です。
こちらの絵具も白緑茶と同じ手順で作ります。
- 絵皿に多めに水を溶かし、丹墨を指で練る。
(作り方は丹墨を参照) - 指先に濃い墨を付けて、藤黄、胡粉、丹墨と丁寧に練り合わせる。
- 乾いてきたら水を加えてよく指で練る。
- 絵具がよく混ざったら水で溶いて使う。
- 筆で絵具を混ぜつつ、適量を筆につける。
- 塗り伸ばさないように、筆を立てて少しずつ塗る。
- 絵の具の筆がなくならないうちに、
絵具を付け足して徐々に塗る。
こちらも日本や中国の服を塗るときに使用します。
また、さまざまな器具などを描く際にも使用するようです。

器具ってなんだろう?
やかんとかかな?
〇〇茶の秘密
たくさん絵具が出てきますが、
〇〇茶と名前がついている色は、
全て藤黄と墨を混ぜたものとされています!
まとめー日本画絵具を混色しよう!9色の作り方を紹介【日本の伝統色】

以上、日本画絵具を混色して作れる
10色を、狩野派の指南書「丹青指南」を元に
解説しました!!
一つ一つの色は馴染みがなくても、
制作の中で役立ちそうな混色がたくさんありましたね!
特に、岩絵具をムラなく塗る方法は
現代の作家さんも必見です!
- 筆で絵具を混ぜつつ、適量を筆につける。
- 塗り伸ばさないように、筆を立てて少しずつ塗る。
(塗るではなく、乗せる!) - 絵の具の筆がなくならないうちに、
絵具を付け足して徐々に塗る。
ぜひ皆さんも、
狩野派の叡智をご自身の制作に活用してくださいね!
日本画の勉強に必須な本2選!
『丹青指南』は、江戸時代の絵師たちが使っていた技法書です。
色の名前や使い方が細かく書かれた、
貴重な日本画の資料を
現代語訳+注釈つきでまとめました。
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