- 日本画の絵具も混色して使える!
- 茶色や苔色、淡い色など、様々な混色がある!
- 難しい混色方法もあるけど、手順通りすれば色を作れる!
こんにちは、日本画家の深町聡美です。
皆さんは日本画を描いていますか!?
今回は日本画絵具を混色して作れる色をご紹介します!
「日本が絵具は混色できない」
と言われることもありますが、
細かい粒の絵具なら混色できちゃうのです!
今回は江戸時代末期の狩野派の指南書
「丹青指南」を元にしているので、
めちゃくちゃマニアックな内容です!
それでも今後の制作に活かせそうな技術ばかり!
ぜひご活用して頂ければ嬉しいです!
より正確で具体的な情報はこちらの本でチェック!
Contents
- 1 日本画絵具の混色比率はケースバイケースで!
- 2 草汁とはどんな日本画の伝統色?ー落ち着いた黄緑
- 3 ウルミとはどんな日本画の伝統色?ー黒っぽい紫
- 4 合わせ黄土とはどんな日本画の伝統色?ーオレンジ色
- 5 丹墨(だんずみ)とはどんな日本画の伝統色?ー赤焦げ茶
- 6 艶墨の絵具とはどんな日本画の伝統色?ー艶のある黒
- 7 朱肉色とはどんな日本画の伝統色?ーペールオレンジ
- 8 白緑茶とはどんな日本画の伝統色?ー不透明なお茶緑
- 9 黄土茶とはどんな日本画の伝統色?ー不透明なココア色
- 10 丹墨茶とはどんな日本画の伝統色?ー不透明な黄色い茶色
- 11 まとめー日本画絵具を混色しよう!9色の作り方を紹介【日本の伝統色】
- 12 丹青指南現代語訳
日本画絵具の混色比率はケースバイケースで!
混色の時、各色の比率は決まっているの?
今回は明記しません!
この記事では「丹青指南」という
江戸末期の狩野派の指南書を元に解説します。
ですが、こちらの本には色の混色比率は書いてありません!
この混合絵具は、全種の混色比率が一様に同じではない。
丹青指南
〜混ぜる色料の量に差があるのは、
その図柄(描くもの)によって違う色が必要なためである。
そのため、それらの割合を記す方法がない。
つまり、描くものやその時々で配分は違うので
書けないということです。
ですが、一部の混色が難しい絵具では
詳細な説明も付けました!
ぜひ最後まで読んで参考にして下さい!
草汁とはどんな日本画の伝統色?ー落ち着いた黄緑
- 藍汁
- 藤黄
藍汁と藤黄は現代では藍色と黄色に当たります!
藍色と黄色で黄緑色になりますね!
草汁は藍汁に藤黄を混ぜた絵具です。
その用途は至って広く、多くの方面に使うとされています。
落ち着いた黄緑なので、
- 苔
- 草
- 山
- 池
など様々な自然物に使えますね。
苔色のような、日本風の落ち着いた黄緑です。
ウルミとはどんな日本画の伝統色?ー黒っぽい紫
- 藍汁
- 臙脂
(上質であれば洋紅も可)
現代では藍色と赤色です。
混ぜると紫色になりますよね!
この絵具は藍汁に臙脂
(良い質の物であれば洋紅でもよい)
を混ぜた絵具です。
紫色の代用として使われました。
少し黒っぽい紫色になります。
合わせ黄土とはどんな日本画の伝統色?ーオレンジ色
- 藤黄
- 丹
現代では黄色と赤にあたります。
混ぜるとオレンジ色になります!
この絵具は藤黄と丹とを混ぜたもので、
橙黄色をしています。
黄土の具を塗ったものに、
影をつける時に使われました。
黄色いものに影をつける時、オレンジ色を使うイメージですね。
もちろん、オレンジ色のものを描く時にも使えますよ。
丹墨(だんずみ)とはどんな日本画の伝統色?ー赤焦げ茶
- 丹
- 墨
今で言うと赤と黒です。
セピアに近い色になるそうです。
狩野派では、この絵具は
着色やペン入れ(骨描きといいます)
など様々な用途に用いていました。
狩野派の絵師たちが常に絵具皿にキープしていた程、重要な色だったそうです。
作り方が難しいので手順も解説いたしますね!
- 丹の上澄みを絵具皿に取り分ける
- 弱火にかけて半分ほど乾かす
- 膠を入れて丁寧に練る
- 指先に濃い墨をつけて、
その指でさらに練る - 少し水を加えて、火で炙る
- 丹と墨が混ざるまで練る
- 水で溶いて使う。
この絵具はしばらく置いておくと、
墨が浮いて丹が沈み、分離します。
このとき、
最初によく練って混ぜていれば、
筆で混ぜるとすぐ元に戻せます。
乾いてしまった時は
皿ごと少し炙り、少量の膠を入れて
よく練って、水で溶いて使います。
丹墨?朱墨?
室町時代、狩野派二代目の狩野元信の頃は
朱に墨を混ぜて朱墨と呼んでいました。
しかし、江戸時代初期の狩野探幽の頃に
朱を丹に変更しています。
それでも引き続き
「朱墨」と呼ばれていました。
狩野探幽までの朱墨とは違うんだね!
艶墨の絵具とはどんな日本画の伝統色?ー艶のある黒
- 胡粉の上に墨を塗る
色というより、艶出しの方法だね!
艶墨は「つやずみ」と読みます。
これは光沢ある黒の塗り方になります。
やり方は簡単で、
胡粉の下塗りの上から濃い墨を塗るだけ!
こうすると、ツヤツヤ輝く漆のような光沢
が出来上がります!
烏帽子や漆器の表現に使われていました。
朱肉色とはどんな日本画の伝統色?ーペールオレンジ
- 胡粉
- 朱の黄目(朱の上澄み液)
現代では白と赤を混ぜた感じです。
ペールオレンジのような色です。
この絵具は、胡粉が入っているので
乾いても練り直して使えません。
朱肉色は「しゅにくしき」と読みます。
この絵具は、胡粉に「朱の黄目」と呼ばれる
朱色を溶いた時の上澄みを混ぜたもの。
専門的なことはともかく、
「白絵具にオレンジ絵具の上澄みを混ぜた感じ」
と思っておいてね!
日本人や中国人の肌の色に使っていました。
ただし、偉人にはこの色が合わないそうで、
その場合は代赭なども混ぜていたそうです。
偉人ってなんだろう…?
黄目が乾いていたら、よく練り直して使って下さい。
白緑茶とはどんな日本画の伝統色?ー不透明なお茶緑
- 白緑青
- 藤黄
- 胡粉
- 墨 少々
ペール黄緑に、白、黒少しを混ぜたイメージです。
不透明な緑色になります。
この絵具も、胡粉が入っているので
乾いても練り直せません。
白緑茶は、「びゃくろくちゃ」と読み、
白緑青を元にして
藤黄、胡粉、少しの墨を混ぜたものです。
つまり、
- ペールな黄緑に灰色を混ぜた色
と考えるとまだ分かりやすいかもしれません。
伝統的な日本画では、
能舞における翁の服の地の色に定められている他、
日本および中国男女の服装にも用います。
白緑茶、黄土茶、丹墨茶は混ぜにくいので
使用にはコツが要ります!
白緑茶、黄土茶、丹墨茶は
軽い顔料と重い顔料を混ぜた絵具です。
なので、混ぜるのも使うのも
非常に難しいとされています。
- 絵皿に多めに水を溶かし、白緑青を指で練る。
- 指先に濃い墨を付けて、藤黄、胡粉、白緑青と丁寧に練り合わせる。
- 乾いてきたら水を加えてよく指で練る。
- 絵具がよく混ざったら水で溶いて使う。
塗るときにも手順があります!
- 筆で絵具を混ぜつつ、適量を筆につける。
- 塗り伸ばさないように、筆を立てて少しずつ塗る。
- 絵の具の筆がなくならないうちに、
絵具を付け足して徐々に塗る。
この三点に気をつければ、ムラのない彩色が可能です!
この方法ではなく、筆継をテキトウに
塗り伸ばしてしまうと色ムラができてしまうので注意!
岩絵具や金泥、銀泥もこの塗り方です!
黄土茶とはどんな日本画の伝統色?ー不透明なココア色
- 黄土
- 藤黄
- 丹
- 胡粉
- 墨
黄土色、黄色、赤、白、黒を混ぜた、複雑な絵具だね!
ココアっぽい色になるよ!
この絵具も、胡粉が入っているので
乾いても練り直せません。
黄土をメインにして、4色もの顔料を加える
複雑な絵具です。
溶き方と塗り方は白緑茶と同じ!
- 絵皿に多めに水を溶かし、黄土を指で練る。
- 指先に濃い墨を付けて、藤黄、胡粉、丹、黄土と丁寧に練り合わせる。
- 乾いてきたら水を加えてよく指で練る。
- 絵具がよく混ざったら水で溶いて使う。
- 筆で絵具を混ぜつつ、適量を筆につける。
- 塗り伸ばさないように、筆を立てて少しずつ塗る。
- 絵の具の筆がなくならないうちに、
絵具を付け足して徐々に塗る。
この絵具は、高砂という能の演目に登場する
老爺と老婆の服に使っていました。
また、能の「間の狂言」でのシテ(主役)や
そのお付きが着る衣装の地の色などに
使われました。
ほかの色同様に、
日本や中国の男女の服装にも使えます。
能の演目とも関わりが深い色なんだ!
丹墨茶とはどんな日本画の伝統色?ー不透明な黄色い茶色
- 丹墨
- 藤黄
- 胡粉
前に作った丹墨(セピア色)に黄色、白を混ぜるよ。
これも胡粉入りの絵具です。
乾いたら作り直しましょう。
この色は「だんずみちゃ」と言って、
丹墨を元にした絵具です。
丹墨は丹と墨を混ぜた、
セピア色、茶色でしたね。
これに不透明な白と、透明感ある黄色の絵具をまぜた色です。
こちらの絵具も白緑茶と同じ手順で作ります。
- 絵皿に多めに水を溶かし、丹墨を指で練る。
(作り方は丹墨を参照) - 指先に濃い墨を付けて、藤黄、胡粉、丹墨と丁寧に練り合わせる。
- 乾いてきたら水を加えてよく指で練る。
- 絵具がよく混ざったら水で溶いて使う。
- 筆で絵具を混ぜつつ、適量を筆につける。
- 塗り伸ばさないように、筆を立てて少しずつ塗る。
- 絵の具の筆がなくならないうちに、
絵具を付け足して徐々に塗る。
こちらも日本や中国の服を塗るときに使用します。
また、さまざまな器具などを描く際にも使用するようです。
器具ってなんだろう?
やかんとかかな?
〇〇茶の秘密
たくさん絵具が出てきますが、
〇〇茶と名前がついている色は、
全て藤黄と墨を混ぜたものとされています!
まとめー日本画絵具を混色しよう!9色の作り方を紹介【日本の伝統色】
以上、日本画絵具を混色して作れる
10色を、狩野派の指南書「丹青指南」を元に
解説しました!!
一つ一つの色は馴染みがなくても、
制作の中で役立ちそうな混色がたくさんありましたね!
特に、岩絵具をムラなく塗る方法は
現代の作家さんも必見です!
- 筆で絵具を混ぜつつ、適量を筆につける。
- 塗り伸ばさないように、筆を立てて少しずつ塗る。
(塗るではなく、乗せる!) - 絵の具の筆がなくならないうちに、
絵具を付け足して徐々に塗る。
ぜひ皆さんも、
狩野派の叡智をご自身の制作に活用してくださいね!
日本画の勉強に必須な本3選!
丹青指南現代語訳
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丹青指南を趣味で現代語訳しました。
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絵具の混色方法ならびに使用感 19種
筆者注:今回は「具」を除く9種を紹介
(この混合絵具の中で胡粉を混ぜた絵具は、
乾いた時に練り直して使うことはできない)
この混合絵具は、全種の混色比率が一様に同じではない。
例えば、草汁の藍勝色っぽいものと、
黄色っぽいものの違い。
また、胡粉に色料(顔料や染料のこと)を混ぜた絵具で、
混ぜる色料の量に差があるのは、
その図柄(描くもの)によって違う色が必要なためである。
そのため、それらの割合を記す方法がない。
しかし書かなくてはならないことは
少し煩雑になるとしてもできるだけ記述する。
一、草汁
この絵具は藍汁に藤黄を混ぜたものである。
その用途は至って広く、多くの方面に使う。
一、「ウルミ」
この絵具は藍汁に臙脂
(良い質の物であれば洋紅でもよい)
を混ぜたものである。
紫色の代用として、一般に使う。
一、合わせ黄土
この絵具は藤黄と丹とを混ぜたもので、橙黄色である。
黄土の具を塗った上の隈取りに使う。
一、丹墨
この絵具は、丹と墨とを混ぜたもので、
その混合方法はいたって面倒である。
この絵具は、洋画における「セピア」のように
幾多の方面にも用いる。
なので、狩野家では、
門弟であっても各自が絵具皿に擦り練って、
常に貯えておき、彩色および、仕立てでの書き起こし、
括り、極隈などに使うものである。
以下はその混ぜ合わせ方を示す。
この丹墨を練り合わせるには、
以前ねった丹の上澄を絵具皿に取り分けて、
弱火にかけて、半分ほど乾かし、
それに膠を入れて、指で丁寧に練りつつ、
その指の先端に濃い墨をつけて、
さらによく練る。
すると、少しずつ渇くので、
その皿に少しの水を入れて、
また火で焙って、
そして繰り返しねって、
丹と墨とがよく混ざったら、水で溶いて使う。
この丹墨は使った後しばらく置いておくと
墨が浮いてきて、丹は沈む。
分離していて色は上下同じではないが、
最初にがんばって練っていれば
筆で混ぜると、すぐに元の様によく混ざり、
使うときに差し支えがない。
使った後にしまっておいて、乾燥した時は、
その皿を少し弱火で焙って、少量の膠を入れて、
さらによく練り、水で溶けば、
また元のようによく混ざって、色は変わらない。
ただし、丹墨は、狩野元信の時代では、
朱に墨を混ぜて朱墨と呼んで使っていた。
そのあとに、探幽斎守信が朱を丹に換えて使用したが、
名称は引き継いで丹墨を朱墨と呼んでた。
しかし現在の名称としては
丹墨とする方が適しているに違いない。
これらの事柄は彩色する上で、
なんら必要ないことといっても、
古画鑑定の参考までに書いておく。
一、艶墨
この絵具は混合絵具ではなく、
単に光沢を出す黒色の塗り方である。
最初に胡粉の下塗りをし、
次に濃い墨を塗ると、
あたかも蝋色漆のような光沢を呈する。
この塗り方は烏帽子、
および黒塗りの漆器類に応用する物である。
一、朱肉色
この絵具は、胡粉に朱の黄目を混ぜたもので、
日本および中国の男女の、肌色に使用する。
しかし偉人には、この色は合っていないので、
ほかに代赭のような絵具を混ぜるのが良い。
黄目が乾いたものはよく練って、
色がよく混ざったものを使うのが良い。
一、白緑茶
この絵具は、白緑青を元として、
これに藤黄、胡粉、少しの墨を混ぜたものである。
この絵具を使うと決まっている絵は、
能舞における翁の装束の地色である。
そのほか日本および中国男女の服装にも用いる。
この白緑茶と、次に記す黄土茶、丹墨茶の三種の絵具は、
いずれも浮上性のものと沈殿性のものを、混ぜた絵の具である。
そのため、練り方および塗り方ともに、
非常に難しい絵の具のため、その事柄を示しておく。
この白緑茶を練る方法。
まず絵具皿に少し多めに膠を入れて溶かす。
この膠で白緑青を指でよく練る。
次に指先に濃い墨を付けて、藤黄、胡粉と
最も丁寧に練り合わせると皿の絵具は乾いてくる。
それを水に浸して染み込ませて、
朱墨を練るように繰り返し練り、
各絵具がよく混ざったら水で溶いて使う。
この絵具および全ての○○茶と呼ぶ絵具を、
むらなく塗る方法。
まず最初に筆で絵具を混ぜつつ、
その絵具を多くもなく少なくもない程度に筆につける。
彩色するときは、直筆で塗り伸ばさないように
少しずつ筆を運んで塗りつける。
そして、筆の絵具がなくならない内に
さらに絵具を付け足して、徐々に彩色を施す。
すると、筆の継ぎ目に絵具の濃淡がないので、
むらなく彩色が完成する。
この方法でなく、
筆継をなんとなくやって
絵具を伸ばし塗りしながら彩色をすると、
筆の継ぎ目に濃淡ができて塗りムラが見えるのは
当然のことである。
この塗り方で彩色する絵具の種類は
金銀の泥および一般の岩絵具である。
一、黄土茶
この絵具は、黄土をもとにして、
藤黄、丹、胡粉、墨とを混ぜている。
その溶き合わせ方および塗り方は、
全て白緑茶と同様の方法でできる。
この絵具は高砂の老爺、老婆の服装、
または(能と能の間の)「間の狂言」における
シテ(主人公)およびその脇士が着る衣装の地色、
またはその縞織物に使用する。
その他日本および、中国男女の服装にも使用してよい。
一、丹墨茶
この絵具は以前練った丹墨をもとにして、
これに藤黄と胡粉とを混ぜたものである。
この絵具でも全ての混ぜ方は白緑茶と同様で良い。
日本および中国男女の服装、
またはもろもろの器具の類にも使用する。
ただし○○茶と呼ぶ絵具は
すべて藤黄と墨とを混ぜたものの総称である。
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